14年前、60才の還暦を迎えるころ、もうボチボチ何か趣味を持っても良いだろうと考えていた時、料理屋さんで食事をしていると、隣の座敷から聞こえる三味線の音色にひかれた。偶然その中に知人がいて誘われ、そんなご縁で新内に飛びつき、早くも足かけ15年になる。
来年の平成29年4月30日国立大劇場で、冨士元流 新内仲三郎師匠の宗家、ご長男の剛先生の家元襲名、我々弟子たちの名取り披露が、盛大に執り行われることが決定した。
絢爛豪華な舞台演出の準備が始まっている。松本幸四郎さんの口上、染五郎さんの舞、その他日本舞踊など、観客の皆さんに歓んで頂ける出し物が沢山用意されるそうです。プロの方々の間に、われわれ弟子も出演させて頂く仕掛けになるとの事で、今から気分上々。一生の記念で、勲章になるので、今から良い舞台が勤められるように、お稽古に精進している。
各席の1,600席を埋めるには、大変な集客が必要になるので、今からご来場いただける方をリストアップして、いかんせん素人芸なので、来ていただくには良い事がないと申し訳ないので、お土産の引き出物は何が良いか、お弁当は、お菓子はと、少しずつ動きが開始されている。
今回ばかりは、少し無理をお願いして、ご来場いただける様に、家族、会社、友人知人への御招待状を来年の年明けには手配をしたり、忙しい事になるので、今からウキウキと心が弾む。
目標があると、それが自分の身の丈以上だと、実力以上の力を発揮できる気がする。それを裏付けるのは、毎日のお稽古の積み重ねに尽きるので、これから8ヶ月いつも以上に精進しよう。
1曲15分程の曲を、1回1時間のお稽古で、大きな声で謡うのは大変なエネルギーが必要です。「腹筋使って謡うのですね」と、師匠に言うと、そうではなく、「体中の筋肉を動かしているのです」と。腹筋で謡うと考えていたのは素人考えの誤りでした。それなのでお稽古は体力が必要なのです。体力がいるので、毎日仕事が終わり、夕食後ではとても、取り組む事が出来ないが、今回ばかりは7時ごろまでには仕事に区切りをつけて、お稽古をしてから、夕食の支度に取り掛かる事にしよう。
仲三郎師匠は1ヶ月程喉を壊され、声を出さない様に養生しておられるので、18日のお稽古は息子さんの剛先生が付いて下さってのお稽古になり、嬉しいやら、恥かしいやら、心地よい緊張感となる。
以前から剛先生のお稽古はどの様なご指導なのか、興味津々のところがあったのだが、今回代稽古で急に実現して、前に仲三郎師匠、右側に剛先生という豪華なお稽古となり、剛先生の、澄んだ、甲高い声が右耳から入るのを、神経を研ぎ澄ませて、聴き取ろうとしても、聴き取れない、焦りながら1時間のお稽古は無我夢中で終わってしまった。でもいつもより声の出方が良かったように自分でも感じる事が出来た。師匠からも「声が太く安定してきた」とお褒めの言葉も頂く事が出来た。奥様からも「邦楽の声になってきた」と褒めて頂けました。
帰りの車中では嬉しさで一杯で、夢心地で運転して帰宅となりました。