舞台関係者から4名の士が選ばれた、落語家柳家さん蕎、劇作家野田秀樹、ダンサー田中泯、あとの一名が
新内節三味線奏者新内仲三郎師匠で在ります。
私は幸運にもふとした縁で富士元派人間国宝仲三郎師匠の元にお稽古に通い始め早23年が経過しました。
10人で入門した中で私一人だけが健在でお稽古に励んでおります。
古典芸能はお稽古の積み重ねが大事で、習得には時間がかかりますよと言われ続けていましたが、23年習っても
少し新内節の旋律に心と喉がようやく慣れたところで、これからですねと師匠からのお言葉を頂いております。
仕事一途は味気ないと60歳の還暦で一念発起して趣味を作ろう、三味線伴奏の小唄でも、民謡でもと考えていたら
料理屋さんの和室から三味の音が聞こえ、その中に知人がいて、23年前に誘われたご縁が繋がり今に至りました。
今でこそ事業の実務は卒業しているので日中お稽古に通えますが、現役のころは仕事が終わってから駆け付け夜間に
お稽古をつけて頂いたり、病気で入院手術しても退院して一番先にしたことは新内のお稽古でした。
師匠からは声が出ているから、大丈夫直ぐよくなるからと、嬉しい言葉を何度も掛けて頂きました。
ご多分にもれず公私ともに浮世は、毎日無理、難題が山積して趣味どころではない時も多々ありましたが、
気持ちの切り替えにはちょうど良い塩梅でした。
年2回大きな舞台で開催される発表会の緊張感も、終了後の鉢払いでの美味しい料理とお酒の歓談も心地
よい解放感で、また次回頑張りましょうで目出度しめでたしの手締めとなります。
新内仲三郎師匠は85歳、私は83歳これからどれだけの時間が使えるか解りませんので、欲をかいて出来るだけ
お稽古を沢山し早く上達して、ご指導頂いている新内節を上手に表現して参りたいと念じております。
たぐいまれなる人間国宝、文化功労者である師匠から直接教授を受けられる果報者で在りますので。